この話はフィクションです。
去年の夏、電話で債務整理のご相談があった。
借金をどうするのがいいか、債務整理の方法(任意整理、自己破産、個人再生)を含めて、後日面談をさせてもらった。
生活費のために借入れを繰り返したがとうとう払えなくなる、住宅ローンがある、住宅は絶対に残したい、とのことだった。
自己破産をすると、自己所有の家は残せない。
私は電卓を叩きながら、任意整理と個人再生のご説明をした。
「住宅ローンを除いた債務の利息を止めて、いまより少額の分割で払っていけるのなら任意整理をするのがいいと思います。」
「それが無理なら、家を残せる個人再生をするしかないと思います。個人再生は受けていないので、個人再生をする場合は弁護士をご紹介します。」
どちらにするか、後日連絡をもらうことになった。その場で決めるような話ではなかった。
個人再生は一度もやったことがないし、何だかよくわからないので、断っていた。弁護士が高い金を取ってやる仕事だと思っていた。
その晩、ずっと面談した彼のことを考えていた。真面目で誠実そうな男だった。
翌日、さっそく電話がかかってきた。
「個人再生にしたいと思います。弁護士を紹介してください。」
「わかりました。個人再生ですが、私でよければやらせていただきます。あらためて面談をさせてもらえませんか。」
この日から、私たちの戦いが始まったのだった。
続く。